現在の一般的な九宮による「本命的殺」の理論を構築したのは、前出の松浦琴鶴先生だとされています。 略して「的殺」と呼ばれ、大凶方とされます。自己の本命宮(本命が入っている宮)の対冲宮(向かいの宮)がこれです。 この方位は、かなりの信憑性があると思って良いでしょう。 本当はもう少し先でまとめとして述べた方が良いことですが、気学と中国の三合派の八宅派・紫白星派は内容的に同じものと言って良いでしょう。 風水の方位区分である二十四山の成立した中国唐代、一行禅師によってそれまで存在していた風水・遁甲の真伝消去が行われました。その方法が、風水八宅派という偽伝をわざと流布させるものだったというのは有名な事実です。 したがって、唐代以降の風水は、真伝の三元派と偽伝の三合派が入り混じったものとなっているのです。 日本で初歩的な風水として紹介されて来た八宅派もそうですが、紫白星派に至っては日本の気学とそっくり同じです。九宮の正五行生剋の吉凶を問題にする点において、本来日本独特のものです。その証拠に、三合派の経典である『郭氏元経』『陽明按策』『佐元直指』には、九宮による本命的殺が存在せず、干支による本命的殺の記述が存在するのみです。 松浦先生の方鑒書が出版された天保8年(1837年)以降、清代中国に逆輸され、今日の紫白星派を形成したと見るのが穏当でしょう。 この点、日本に中国風水を紹介し、今日の風水ブームを作ったとされるH氏は、明代の『滅蛮経』に紫白星派の起源を求めていますが、そうした事実があったとしてもそれのみではないと言うべきです。(ちなみにその説を推し進めれば高木彬光氏の遺作『相性判断』は全くの偽伝ということになります) さて、本命的殺の実効性については、動的方位として用いて悪いことがあったと、まことしやかに言う人もいますが、本来静的方位である風水の理論という点を考慮すると、若干割り引いて解釈すべきでしょう。 即ち、本命的殺の方位に移転したから必ず悪いことが生じるかといえば、そうではないということです。 (写真は松浦琴鶴著『三元秘用 方鑒図解』) (2014/12/5記) |