よく、小さいときの夢が大人になって実現するかどうかが云々されることがありますね。日本ですと、昔から宮仕え、現代ではサラリーマンが普通の就職パターンですが、その人の個性によっては、と申しますか、個性の強い人の場合宮仕えではどうにも収まり切らない、あるいは血液型Bである(笑)という要因から、「異途顕達」の道を歩まれる方も世の中には存在します。
これなどは、いわゆる「貴命」ではないのですが、価値観の多様化・流動化した現代日本では、実績が人目を引き長期であるとそれなりに意外と地位があるように見られたりします。
さて、ミュージシャンの倉木麻衣さんの場合、本テーマによく沿う面が見て取れます。それは、幼少時からの家庭環境の影響による命宮の変化があったのではないでしょうかという1つの仮定ですが、そう思わせる相当高い蓋然性が存在します。
麻衣さんの原宮は艮、命宮は艮、身宮は坎です。ところが、これをそのまま受け入れるとすると、いくつかの疑義が生ずるのです。第1に、職業です。この事例では艮なので、宗教性があり経済観念があり渋い、という点は当てはまります(笑)。しかし、工業方面に成功者が多いというのにはどうも当てはまりません。ご本人は明らかに文系的才能を持っています。しかも芸術家タイプです。現に芸能分野で大成功を収めています。身宮坎の職業分野ですが、身宮でこのような成功を収めるのは、理論上無理があるのです。第2に、年運実績です。コカコーラとタイアップしての「爽健美茶 Natural Breeze 2001 happy live」は、命宮艮とすると暗剣付きの風地観、ツアースタートの8月は五黄がらみの八白で悪変化になり、理論上ほぼ1年以内に凶事が発生しないといけません。しかし、目立つ凶事は発生しませんでした。この点も、命宮坎とすると、主運坎、副運艮となり、2001年8月の命宮は年運、単純に見ても四緑で物事が調う、挨星卦は地風升で地位の上昇となり、事実に符合します。月運も先述ほど悪くありません。
したがって、原因はともかく、この事例では命身宮が逆転しているのではないか、という推定が働くわけです。では、なぜそうなったのでしょうか。私は、家庭環境と本人の幼少時よりの「夢」に起因すると考えます。傍証する事実として、第2回で書く予定である、方位使用による命身宮変化の要因が見当たらないということがあります。麻衣さんの場合、ご両親が俳優であるという背景事情や、小さいときから演歌や洋楽に親しんだことが芸術性の坎を強調する要因になったと考えられます。
子平においても、大運第1運は家庭環境・原風景を表すのみでなく、一生の性格・体質形成に影響するものとして重視するのですが、家庭環境に起因する心理的要因は甚大で、かなり頻繁に本人の命身宮すら変化させてしまうということになります。まして倉木麻衣さんの例では原宮艮で通常なら命宮艮が強調される事例であるにも拘らず、主運・副運が逆転しているので、原風景の影響は恐ろしいということです。
注 文中の挙例は、若干失礼にあたるかとは思いましたが他意なきことを一言お断り申し上げておきます。本来公刊書で取り上げようとした高度な題材で、現在類書にはほとんど記載されていません。したがって、一応菅原光雲のオリジナルとさせて頂きます。